西欧政治から学ぶもの〜民主政治の成立を通して〜
京都産業大学文化学部 国際文化学科 小牧 円
はじめに
日本の社会は今、政治不信の真っ只中にいる。国で言えば衆議院や参議院、地方となると都道府県会議員などの選挙の投票率はかなり低い。衆参議員では50%後半、都道府県会議員にいたると50%前半もしくは半分を切る値になるかもしれない。しかし、なぜ日本国民は政治に関心がなくなったのだろうか。議会は行政を監視するという国民、住民の代表者が集まる重要な場である。日々、私たちの生活に深く根ざした問題が論戦されると言ってよい。しかしながら、その代表者を選出する選挙において日本国民あるいは住民は権利を放棄し、国および地方の政治を腐敗させていっている。その結果、議会は本来の役目である行政の監視を忘れるかのように、政党間争いを激化させ政治の主導権を誰が握るのかで泥� �の激戦を繰り広げている。本当の意味での政治、議会はどのようなものであったのだろうか。
ここで私は西欧の議会に着目してみた。例えば、イギリスの議会は歴史が生み出したと言っても過言ではない。国民の政治関心度も高く、活発な議会が繰り広げられている。このように歴史に裏打ちされた議会や国民主導の議会は西欧にはたくさんある。
今回は民主政治の成立(第一章)と現代の政治(第二章)と大きく2つにテーマを分けて政治を考えていく。第一章で古代・近代の民主政治の変遷を辿り明らかにしたうえで、現代の民主政治を考える。第二章では現代の西欧各国の政治を調べ、西欧政治の現状を探る。第三章でまとめと現代の政治体制の欠点を導き出してみたい。
第一章 民主政治の変遷
「民主」という言葉は頻繁に耳にするが本当のところの意味を理解することは難しい。民主から派生した言葉はたくさんある。「民主」とは、『広辞苑』から引用すると「一国の主権が人民にあること。」さらに「民主政治」とは、「民主主義にもとづく政治。国家の主権が人民にあり、人民の意思にもとづいて運用される政治」(『広辞苑』より)である。
では、頻繁に使われる「民主主義(democracy)」とは何だろうか。本などで出てきても、なんとなく理解している気になって、さらりと流している人も多いだろう。「民主主義」とは、「古代ギリシア語のdemokratiaで、demos(人民)とkratia(権力)を結合したもの。人民が権力を有し、権力を自ら行使する立場をいう。」(『広辞苑』より)また、民主主義は古代ギリシアの都市国家において初めて行われ、近世に至って市民革命を起こした欧米に開花した。
今日の政治は、この「民主主義」に基づく政治を理想としている。しかし、国民の政治離れは深刻化し、国民は政治に参加できる状態にあるのに政治に対して無関心な態度をとっている。現代における民主政治は真の「民主的」、国民主導の下に行われる政治なのだろうか。本章では、民主政治の誕生から現代に至るまでの変遷を辿って、民主政治のあり方を探る。
第一節 民主政治の誕生と衰退
1.古代民主政治の誕生
今日、多くの国の政治形態は民主政治と言われ、国民が直接的・間接的に政治参加できる。民主政治は現代では当たり前のように考えられ、独裁政治というものはほとんど見られない。議会はフランス革命やイギリスの市民革命を経て、現代的な政治形態ができあがったかのように思われるが、この民主政治は一体いつ生まれたのだろうか。それは驚くべきことに今から2000年も昔の古代ギリシアのポリスで誕生した。とりわけアテネで行われていた民主政治こそ古代民主政治の典型例だと言われている。そこでは市民が立法から執行まで直接政治(=民会)を行っていた。
2.古代民主政治の衰退
現代政治の中で基本理念とされている民主政治は、ソフィストの登場や戦争などによって衰退して、政治の中心は支配者階級に統治されるようになった。では、なぜ民主政治という現代政治の重要要素が失われてしまったのか。
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